CEFRを知らずして社会人の英語克服は成し得ない

CEFRを知らずして社会人の英語克服は成し得ない

・CEFRとは何か?


この記事では、”CEFR(セファール)“について説明します。

英語学習を進めていく上で、あなた自身の英語能力の測定やモチベーションの維持のために、英語資格は切っても切り離せない関係にあると思います。

しかし、世の中に英語資格は数多く存在します。有名なところで、実用英語技能検定(英検)、TOEIC Listening & Reading Test(TOEIC)、TOEFL、IELTSなどの英語資格があります。そのため、英語学習者はどの資格のどのレベルから受験すればよいかで悩むこととなります。

そんな中、この“CEFR”は数多く存在する英語資格だけでなく、他言語に対しても共通の参照レベルを設けています

・CEFRは、各英語資格のレベルを客観的に比較することができる。
・CEFRは、多言語に対応している。


ここでは、”CEFR”の概要と日本で派生した”CEFR-J”について説明します。

本記事のテーマ:
・CEFRについての概要
・CEFR-Jについての説明

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1. CEFRの生い立ち

Cefr Delicious

・CEFRは誰が作ったのか?


CEFRを理解するためには、CEFRができるまでの歴史を理解する必要があります。この歴史の流れを理解すること自体は、CEFRそのものには直接関係することではありませんが、CEFRができるまでの背景を知ることは、CEFRへの信頼に繋がり、それは結果として英語学習をする上での揺ぎない指標となります

まずは、CEFRを作り上げた欧州評議会(CoE:Council of Europe)について説明します。

・CEFRは欧州評議会によって作られた。


また、CEFRを作り上げた機関を欧州評議会ではなく、欧州連合(EU:European Union)と説明している間違った記事をよく目にします。しかし、欧州連合はヨーロッパを中心に27カ国が加盟する政治経済同盟であり、言語とは直接関係がありません。

この間違った情報が流れている理由は、欧州連合が各構成員の言語的、文化的多様性を尊重し市民としての政治参加を保障するために、当初より理念として”多言語主義”を掲げていたためと考えられます。後で、説明しますがCEFRは”多言語主義”に似た”複言語主義”を掲げており、さらに欧州連合と欧州評議会は対象が違うものの、志しが近いために混合しやすいものとなっています。

・欧州連合と欧州評議会は、まったく別の機関である。

1.1 欧州評議会とは

・欧州評議会とは何か?


非英語圏の国々おける言語政策は、時として行政機関によって作られる場合もあります。欧州評議会(CoE:Council of Europe)もその1つで、1949年に設立されたヨーロッパの総合に取り組む国際機関です。この欧州評議会は法定基準、人権、民主主義の発展、法の支配、文化的協力に重点を置いています。現在の欧州評議会には、次の47の国が加盟しています。

加盟国:
イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、アイルランド、ギリシャ、トルコ、アイスランド、ドイツ、オーストリア、キプロス、スイス、マルタ、ポルトガル、スペイン、リヒテンシュタイン、サンマリノ、フィンランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ポーランド、ブルガリア、エストニア、リトアニア、スロベニア、チェコ、スロバキア、ルーマニア、アンドラ、ラトビア、アルバニア、モルドバ、北マケドニア、ウクライナ、ロシア、クロアチア、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モナコ、モンテネグロ


一覧表には48の国が記載してあります。これはセルビアが2003年にセルビア・モンテネグロとして欧州評議会に加盟したものの、2006年のモンテネグロ独立に伴い、セルビア・モンテネグロの承継国となったためです。つまり、モンテネグロとセルビアは同一国でダブルカウントされています。

なお、日本はカナダ、メキシコ、アメリカ、バチカンとともにオブザーバの資格を有しています。

・欧州評議会は、48ヶ国の加盟国によって構成される。
・日本は、オブザーバの資格を有している。

1.2 欧州評議会の創設

・欧州評議会はどのようにして創設されたのか?


ヨーロッパは、第二次世界大戦の終結を迎えた1945年に政治面として”ヨーロッパ諸国民の間における和解”という課題が浮上しました。そして、ウィンストン・チャーチル(Sir Winston Leonard Spencer-Churchill)がチューリッヒ大学の演説において、ヨーロッパ合衆国の樹立と欧州評議会の創設を唱えました。

また、1948年5月にチャーチルが司会でハーグ欧州会議が開催されました。この際に欧州評議会のあり方についても議論がなされましたが、議会の構成で対立が生じます。それが、”政府の代表者が集まる国際機関”か”議員らによる政治フォーラム”かというもので、最終的には双方の考えを織り交ぜ、閣僚委員会と議員会議を設置することとなりました。

1949年5月5日にロンドン条約が署名されたことで欧州評議会の創設が決定されました。この時点で、ベルギー、デンマーク、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリスの10か国が署名しています。その後も多くの国が続き、1990年代初頭には中東欧諸国が加盟しました。最終的に2007年までに4ヶ国(ベラルーシ、カザフスタン、コソボ、バチカン)を除くヨーロッパ全ての国(上の表参照)が加盟しました。

・欧州評議会は、第二次世界大戦後の1949年5月5日に創設が決定した。
・欧州評議会は、最初10ヶ国からスタートした。

1.3 CEFRの公開

・CEFRはどのようにして作られたのか?


欧州評議会は、国家を超えた組織として、文化に関する協力を主な業務としている。そして、欧州評議会の言語対策として”外国語学習の多様性を促す“目的で、次の5つの基本理念が掲げられました。

5つの基本理念:
・複言語主義(Plurilingualism)
・言語的多様性(Linguistic Diversity)
・相互理解(Mutual Understanding)
・民主的市民性(Democratic citizenship)
・社会的結束性(Social Cohesion)


そしてその基本理念の下、“ヨーロッパ市民のための言語学習”プロジェクト(1989~1996年)を推進するための中心的役割として、CEFRという存在が生まれることとなりました。

・CEFRは、”ヨーロッパ市民のための言語学習”プロジェクトを推進する中心的役割を担っていた。


CEFRの正式名称は、”Common European Framework of Reference(ヨーロッパ言語共通参照枠)”です。CEFRは、多言語が行き交うヨーロッパ圏内において、外国人言語学習者の習得状況、評価を客観的に評価するためのガイドラインです。次の3つがCEFRの基本理念となります。

CEFRの基本理念:
・個人が複数の言語を目的に応じて使い分けるという実態に対応する。
・共通参照レベルによる能力記述文(Can-do-statement)によって、基礎段階の言語使用者A1から熟達した言語使用者C2までの6段階に設定する。
・言語や国境の枠を越えて同一基準を用いて、教育や就労の流動性を促進する。


また、CEFRは”ヨーロッパ市民のための言語学習”プロジェクトの中心的役割でありながら、公開までに20年以上という長い年月を有しました(2001年に公式活用開始)。これには、欧州評議会によって徹底した研究と実証実験を行なったためであり、現在では日本語を含む40言語で参照枠が提供されていることを考えるとその年月も納得がいくと思います。

さらに、CEFRは言語資格を承認する根拠にもなるため、国境や言語の枠を越えて、教育や就労の流動性を促進することにも役立っており、国際基準となりました。

・CEFRは国際基準になっている。
・CEFRは長い年月をかけた信頼できるガイドラインである。


ここで、広く一般的に普及しているCEFRの表を紹介しておきます。

CEFRの表:
①Common Reference levels(共通参照レベル)
②各資格・検定試験とCEFRとの対照表


①については共通参照レベルであることもあり、CEFRの基本理念に沿った概要に近いものとなっています。そのため、英語学習としてCEFRのガイドラインを用いる場合は、Self-assessment grid(自己評価グリッド)のEnglishを参照した方が内容がより具体的で実際の英語学習には役立つと思います。

また、②については各資格を実施している組織が独自に出しているものになります。これまでに何度も見直しがされており、信頼度は年々高まってきています

・CEFRには、有名な2つの表がある。


参考までに①の英語版日本語版を記載しておきます。

Cefr English
出展:Cambridge English Language Assessment
Cefr Japanese
引用:Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/1402610.htm
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2. CEFR-JとCEFRの関連性

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・CEFR-Jは誰が作ったのか?


CEFRと同様にCEFR-Jを理解するためには、CEFR-Jを作った組織を理解する必要があります。

CEFR-Jは、2004年に採択された科学研究費基盤研究(A)「第二言語習得研究を基盤とする小,中,高,大の連携をはかる英語教育の先導的基礎研究」によって始まったもので、CEFRを日本の英語教育のために再構築したものです。

つまり、CEFR-Jは大学教員で構成された研究グループによって作られたものです。

大学教員の大きな仕事の1つに外部資金獲得があります。このCEFR-Jに関する研究でこの研究グループは、2004年からの15年間で科学研究費(科研費)として、約2億円(1億9148万円)を受け取っています。そして、研究とは実用化を伴うことは必ずしも必要ではありません。特に日本においてはその傾向が強く、研究によって得られた成果が即実践に適用できるかはいささか疑問があります。つまり、CEFRほどの信頼性は得られないということです。事実、多くの人がこのCEFR-Jの存在をしらないはずです。

詳細を知りたい方は、次の公式サイトをご覧ください。

・CEFR-Jは、CEFRをベースとしている。
・CEFR-Jは、大学教員による研究の成果物である。
・科学研究費約2億円が使われている。

・CEFR-Jは研究の一環であるため、CEFRほどの信頼性はない。


ここでCEFR-Jの大きな特徴の1つであるレベル構成について説明します。日本国内で英語学習をしている日本人英語学習者は、CEFRが同じAレベルであったとしてもできること(CAN-DO)に大きな違いがあるとされています。そのため、CEFRの大きな枠組み(レベル分け)では日々の英語力の伸びが見えにくいという現状があると考えた研究者らは、CEFRのA1~B2までのレベルを更に細分化し、A1.1、A1.2、A1.3、A2.1、A2.2、B1.1、B1.2、B2.1、B2.2の9つにしました。また、A1.1の下に新たにPreA1を設けました。

ここでPreA1について、注意すべき点があります。それは、すでにCEFR A1の下にはA0が設置されている点です。事実、NHK(日本放送協会)が基礎英語1、2、3の下に小学生向けとして基礎英語0(CEFR A0に対応)を2018年4月から設けています。先にも述べましたCEFR-Jの知名度は低いです。そのため、多くの企業が知名度が高いCEFRを採用しているのが現状です。

・CEFR-Jは、CEFRのA1~B2までのレベルを更に細分化している。
・CEFR-Jは、A1.1の下に新たにPreA1を設けている。

・CEFR-Jの知名度は低い。

・CEFR-Jに実績はあるのか?


CEFR-Jは、科研費の取得手段と捉える方も多いと思います。そこで、実績に焦点をあててみます。

CEFR-Jは、株式会社 Z会の”英語4技能講座”で採用されています。これは、おおきな実績といえるでしょう。

しかし、それ以外の企業がCEFR-Jを採用したケースがありません。これには理由があります。

それは、株式会社 Z会が”CEFR-J Symposium”のゴールド・スポンサーだという点です。その他のゴール・スポンサーには、株式会社 サインウェーブ、ピアソン・ジャパン株式会社、株式会社 ベネッセコーポレーションがあります。さらにシルバー・スポンサーには、株式会社アルク、オックスフォード大学出版局株式会社、一般社団法人 CIEE国際教育交換協議会、東京書籍株式会社、株式会社 三省堂がついています。

・CEFR-Jは、株式会社 Z会の”英語4技能講座”で採用されている。

・株式会社 Z会は、”CEFR-J Symposium”のゴールド・スポンサーである。


このことを踏まえるとCEFR-Jは実績がないため、まだ英語学習の指標としては十分といえないでしょう。しかし、長い年月をかけて研究されてきたため、研究としての実績はかなり詰まれています

特に、“CEFR-J Wordlist”と呼ばれるCEFRのA1からB2までのすべての単語を集計した全体表は参考になると思います。この”CEFR-J Wordlist”は、2004-2007年度基盤研究(A)(課題番号:16202010)(研究代表者:小池生夫)において、中国、台湾、韓国の小中高の主力教科書を元に共通語彙を抽出しており、信頼性は高いと考えられます。また、基盤研究(A)が終了した後も継続して更新されており、Version 1.5は2019年4月3日の更新となっています(2020年2月24日確認)。

・CEFR-Jは、研究成果の実績は十分にある。

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3. まとめ

この記事では、CEFRの概要CEFR-Jについて説明しました。簡単にまとめると次のようになります。

CEFR:
CEFRは、20年以上という長い年月をかけ、欧州評議会によって作られました。CEFRのガイドラインは、各英語資格のレベルを客観的に比較することができるだけでなく、多言語にも対応しており、今では国際基準となっています。また、欧州評議会自体も48ヶ国もの加盟国によって構成されており、日本もオブザーバとして参加しています。

CEF-J:
CEFR-Jは大学教員らによる研究の成果物CEFRをベースとしています。CEFRのA1~B2までのレベルを更に細分化し、A1.1の下に新たにPreA1を設けたことがCEFR-Jの大きな特徴です。CEFRに比べ実績自体は少ないものの、科学研究費が約2億円も投入されており、研究成果としては十分にあります。


CEFRもCEFR-Jもどちらも優れたガイドライン
です。英語学習者がこれらを上手く活用することができれば、効率的に英語能力を向上させることができるでしょう。

・英語学習者は、CEFRとCEFR-Jと上手に付き合う必要がある。


最後に、CEFRと英語資格、英語上達完全マップの3つの関連性については、次の記事をご覧ください。